ロフトとフェース角|基礎から専門知識まで
♦ ロフトの基礎知識
クラブフェースの傾斜角のことを ロフト (loft) と言い、通常 その角度が大きいクラブほど ボールは より高く上がり、打ったボールのバックスピン量も多くなる。そして、同じ打ち方をした場合、そのショットの飛距離は(遠くに飛ばせるクラブになれば なる程 シャフトの特性やヘッドの重心深度にも影響されるが)ほぼ このロフトによって決まる。最も遠くに飛ばすためのクラブである ドライバーのロフトは 平均的な男性ゴルファーの場合 10°前後が最適で 市場に出回っている ドライバーの多くは そうしたロフトのクラブである。逆に、ボールを高く上げたり バックスピンを かけたりし易いものの 遠くに飛ばすことの出来ないクラブが ウェッジで そのロフトは 50° ~ 60° になる。つまり、パターを除く 13本のクラブで ドライバーからウェッジまでのレンジを カバーする訳だから クラブ間のロフトの差は (56° - 10°) ÷ 12 = 3.8° で 4° 前後になるように クラブの組み合わせを考えるのが基本である。
以下は アイアンのロフトの例であるが 最近のアイアンセットは ピッチング ウェッジ (PW) ~ 5番アイアン (5I) の 6本セットで売られるものが 最も 一般的になっており そうしたセットの ロング アイアンは 別売りの単品で 買い揃える必要がある。ロング アイアンのロフト相当のユーティリティや フェアウェイウッドを 買う人が多いからである。なお、下のテーブルのように アイアンのロフトは 番手によって決められている訳ではない。昔のアイアンセットは 概ね (A) のようなものであったが 最近は (B) (C) のようなセットが 主流になっている。また、(D) や (E) のような 飛ぶアイアンセットも売られるようになっており そうしたセットは 5 or 4本組で 売られるものが多く、ショートアイアン側の番手間のロフト差が 4.5° とか 5° のような設定のアイアンセットであるのが普通。
番手 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | PW | GW | SW |
(A) | 18° | 21° | 24° | 27° | 31° | 35° | 39° | 43° | 47° | 52° | 56° |
(B) | - | 21° | 24° | 27° | 30° | 34° | 38° | 42° | 46° | 51° | 56° |
(C) | - | - | 21° | 24° | 27° | 30° | 34° | 39° | 44° | 50° | 56° |
(D) | - | - | - | - | 24° | 28° | 32° | 37° | 42° | 49° | 56° |
(E) | - | - | - | - | - | 26° | 29° | 33° | 38° | - | 56° |
上のテーブルの (A) (B) (C) の組み合わせのように サンド ウェッジ (SW) が 56° ~ 58° であれば 50° ~ 52° のギャップ ウェッジ (GW) を入れるのが一般的である。ただし、(D) のような場合は 49° のようなウェッジを入れるか、48° と 52° のように 2本のウェッジを入れるか と言う選択肢に悩むことだろう。一方、(E) のようなセットを買った場合は PW と SW のロフト差が 20° 近くもある訳だから そのギャップをどのように埋めるかと言う難解な問題が生じてしまう。出来れば、こうしたセットを買うのは 避けた方が賢明だろう。
他方、トラディショナルなセットの 3番、4番アイアン相当のクラブは ユーティリティや フェアウェイウッドであれば 何番を入れれば良いのかという疑問を持つ人も居るだろう。ユーティリティにおいても アイアンのように 番手によって ロフトが決まっている訳ではないので クラブのロフトと シャフトの長さをチェックして 決めるべきだが、殆どの場合、ユーティリティの 3番は 3番アイアンより ロフトが立っていて 19° 前後、4番は 21° ~ 22° と 3番アイアンに近いロフトになっていて どちらも シャフトは 若干 長いはずである。
♦ フェース角の基礎知識
一方、フェース角 (face angle) は クラブを持ってアドレスした時のクラブフェースのターゲットに対する向きで 通常は スクウェアにすべく 0° か 僅かに オープンであるべきだが (詳細後述) クラブによっては 意図的に それが 多少 右 または 左を向いているものもある。右利きの人のクラブのフェースが 右を向いていれば フェース角がオープンなクラブで 左を向いているものは それが クローズドなクラブになる。フェース角は ボールの打ち出し方向とサイドスピンに大きな影響を及ぼすもので、例えば、スライサーの人は 多少 フェースがクローズドな 所謂 フックフェースのクラブを使えば 応分にスライス方向のサイドスピンを減らすことが出来、ボールを捕まえることが出来るようになるだろう。スライスに悩んでいるゴルファーが多いので 市場には そうしたクラブが数多く出回っているが ドロー系ボールのヒッターにとって そうしたクラブは 引っかけ易く、扱い難いクラブになる。 » スピンの話
♦ クラブの握り方とセットアップ
同じクラブでも クラブの握り方、セットアップの仕方が変われば クラブのロフトとフェース角は 変わるものである。例えば、クラブフェースが クローズドになるように クラブを握って セットアップをすれば ドローやフックボールを打つことが可能になる。ロフトも少し立ってくるから 飛距離も伸びる理屈だ。また、グリップをストロング グリップ(左手のナックルが見え 右手の親指の付け根が 右肩を指すようなスタイルのグリップで フック グリップとも言う)にすれば フックの度合いは さらに 大きくなるだろう。向かい風の時に そうしたクラブの使い方で 風に強いボールを打つプレー スタイルをする選手も居る。フェースをオープンにして ウィーク グリップで クラブを握れば 逆の現象が起きることになるから スライス ボールが打ちたい時や ロブ ショットの時は そうしたクラブの使い方をすれば良い訳だ。ただし、クラブの握り方が同じでも セットアップ時の手の位置やクラブの置き方が変われば フェースは クローズドにも オープンにも見えるので その観点から 本当の意味で クラブフェースをクローズド または オープンにして クラブを持つことが どういうことかを理解する必要があろう。
♦ 最適な弾道を生むフェース角
ボールを ヒットする時のクラブフェースの向きは 三つの要素に左右される。つまり、前述した クラブの握り方、スイング軌道、そして、ロフトとフェース角である。スライサーの人は 基本的に そのスイング軌道が アウトサイド・インと言われるもので ターゲットに対して スクウェアにならず カットする形だから サイドスピンがかかり、結果として、スライスボールになる。そうしたスイング軌道の打ち方は パワーの伝達効率が悪いだけでなく、方向性に悪影響を及ぼすので、あまりオススメできるものではない。ただし、毎回 同じように繰り返して出来て 精度が高ければ それを活用して レベルの高いプレーをすることが不可能な訳ではない。
フェース角は 右利きの人の場合 右を向いていれば オープン、また、左を向いていれば クローズドな フェース角になるが 1°とか 2°とか言った度合いで(意図的に)傾けるのである。適正なフェース角より オープンになっていると プッシュアウトや スライスが出やすくなるし、逆に クローズドであれば 引っ掛けや フックが出やすいという結果になる。他の要素も影響するが 基本的には ドロー系のボールを打ちたければ フェース角をクローズドに そして フェード系のボールにしたければ フェース角をオープンにすれば良いことになる。
一方、調整機能のないクラブでも フェース角を調整したいと感じた場合は まず フェース角を変えずに 同様な効果を得ることも可能である。鉛テープをクラブヘッドに貼って重心角(» 詳細)を変える方法だ。重心角が大きければ クラブには ダウンスイング時に フェースをクローズドにする力が掛かる理屈である。重心角の微調整だから 必ずしも 満足な結果になるとは限らないが 興味のある方は 鉛によるクラブ調整法 のページで詳細を参照下さい。
# | フェース角 | ロフト |
1 | ±0.0° | 11° |
3 | -1.0° | 15° |
5 | -1.5° | 18° |
7 | -2.0° | 21° |
♦ 飛距離が伸びるロフトの秘密
最近のドライバーは そのほとんどが 高い打ち出し角で低スピンのボールを打つことによって飛距離を出すという設計概念に基づいて作られたものだ。(» 詳細)そして、クラブヘッドが大きくなっているため 重心距離が長い、即ち、クラブヘッドの慣性モーメントが大きいのが特徴で 正しいフェース角と重心角のバランスが取れていないクラブでは プッシュアウトやヒッカケが頻発するというような結果にもなり兼ねない。
まず、右図の説明が ロフト(リアル ロフト)であるが 年配のゴルファーの中には 未だに 昔からのロフトの概念で ロフトの立ったものを好む傾向があったり 自分に最適なロフトを決め付けている人も居るようだが ヘッドの重心深度やシャフトの特性などによって 打ったボールの弾道(打ち出し角とスピン量)は 変わるものである。つまり、最適なロフトは そうした条件によって変わるもので 最適な 打ち出し角とスピン量にするために ロフトをどうすべきか というロジックで考えるべきなのだ。
一般論になるが、多くの人は 現在 使っているドライバーの ロフトより ロフトのあるものを使った方が 実は 良い結果になる可能性は高い。スピン量を減らすために ロフトを立てようという考え方でクラブを選んでも ヘッド スピードが十分でない場合は ボールが 早く ドロップして 飛ばない可能性が高い。ドライバー ショットのスピン量は ロフトにも影響されるが シャフトや ヘッドの重心深度に大きく影響されるので スピン量を減らしたければ ロフトの前に そちらに目を向けるべきである。
ヘッドスピード (MPS) | 最適ロフト | プレーヤーのタイプ |
48 ~ 56 | 8 ~ 10.5° | ツアープロ並み |
42 ~ 47 | 9.5 ~ 11° | 平均的 男子 |
38 ~ 41 | 11 ~ 13° | 非力な男子 / 力のある女子 |
33 ~ 37 | 13 ~ 15° | 平均的 女子 / グランド・シニア |
32 以下 | 16°+ | 非力な女子 |
シャフトの硬さや キックポイントの違いによって ボールを打つ時の(動的な)ロフトは変わるし ヘッドの重心深度によって ボールの打ち出し角は 変わるので 自分にとっての最適ロフトを考える時に その点を忘れてはならないと言うことだ。上の最適ロフトのテーブルは そうした理解の下に 参考にして欲しい。なお、メーカーによっては ソールに対するフェースの傾斜角(それを オリジナル ロフトと言う)を ロフトとして表示していることもある。ロフトと言った場合は 一般的に リアル ロフトのことを言う訳だが そうしたことがあることも覚えておいて欲しい。
また、新品のクラブのロフトや フェース角を実際に計測すると 一流メーカーのクラブでもかなりバラツキがある。ロフトや フェース角は 通常±1°の公差というのが実態のようだから ロフト 10° と表示されているクラブは 9° ~ 11°の範囲のクラブで 最悪の場合は 1° 狂っていることもあると言うことだ。