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アメリカのクラブライフ

Introduction
アメリカには 概ね 15,000 の ゴルフ コースがあり その人口 3億 2000万人の約 8% である 2,500万人前後の人が ゴルフをすると言われている。世界中に 約 33,000 のゴルフ コースがあり、ゴルフをする人の数は 6,000万人程度と推定されているから アメリカには ゴルフ コースと ゴルフ人口の 40 ~ 45% が 集中していることになる。そんな アメリカの プライベートクラブが どのようなものなのかを ここでは 少し お話ししよう。

ゴルフコースの運営形態

アメリカのゴルフコースと一言に言っても 様々なタイプのものがある。大雑把には プライベートクラブのコースとして 管理、運営されているものと パブリックに開放されている 所謂 パブリックコースに大別されるが さらに 下のように細分される。

アメリカのゴルフコースの形態
つまり、メンバーがクラブの所有者になる メンバーオウンのプライベートクラブと 施設の所有者である事業主がメンバーを募る形態のプライベートクラブである。一方、パブリック コースには 地方自治体が施設を所有し 運営する 所謂 ミュニシパルコースと 民間の事業主が 施設を所有し 運営するものとがある。かつては、リゾートタイプ以外のパブリック コースの多くは グリーンフィーは 安いが コースやサービスの質は それなりと言うものが殆どだったが、パブリックコースも 近年は多様化し アップスケールの高級なものが数多く作られるようになった結果、パブリックコースでも 素晴らしいコースは 少なくなくなった。ミュニシパルコースは 一般的に 庶民的で 手軽に楽しめる フィーが安価なものが多いが ニューヨーク州立公園の Bethpage ゴルフコースや サンフランシスコ市営の Harding Park のゴルフコースなど メジャー大会が行われるような 素晴らしいコースもある。

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プライベートクラブの実態

一方、アメリカのパブリックコースの数は 約 11,000 で、ほぼ 4,000 が プライベートクラブのコースである。ただ、アメリカのプライベートクラブの殆どは 日本のメンバーが居るにも拘らず ビジターを受け入れる多くのゴルフ場のように メンバーでない人に その施設を開放しないのが 原則だ。日本にも そうした本当の意味でのプライベートクラブは 一部にあるが アメリカのプライベートクラブの殆どは メンバーが ビジター同伴でプレーすることはあるものの 基本的には メンバーだけのグループで プレーすることを念頭に置いたものである。

ただし、比較的数は少ないが 一部に法人会員制度のあるようなプライベートクラブもあり、そうしたクラブでは ビジターを連れたメンバーのフォーサムや スリーサムという形で プレーがなされることが多くなる。また、入会金と年会費を払っているメンバーが居るが そのゴルフコースが ビジターにも開放されているクラブは セミプライベートのクラブと言うことになるが アメリカでは そうした形態で運営されているクラブは 比較的 少なく その点も 日本とは 異なっている。

一般的に プライベートクラブの多くは(例外は あろうが)そのメンバーの数が 18ホールのゴルフコースに対して 200 ~ 300人程度であるから 本当の意味でのプライベート クラブのメンバーの数は 多くとも 全米で 100 ~ 150万人程度で ゴルファーの約 20人に 1人だけが プライベートクラブのメンバーである。つまり、アメリカで プライベートクラブのメンバーとして ゴルフが出来る人は 一部の恵まれた人達だけと言うことだ。週末のゴルフは 仲の良いメンバーと一緒に 望む時間帯に 素晴らしいコンディションのゴルフコースで スムースな(毎ホール 待たされるようなことない)ラウンドを 楽しむことが出来る。ティータイムの確保に 翻弄され 1ラウンド 5時間以上のラウンドを覚悟しなければならない ミュニシパルのパブリックコースとは 正直なところ 雲泥の差がある。

プライベートクラブは 通常 何々カントリークラブ または ゴルフクラブといった名前が付くが 前者の場合は 社交クラブの意味合いが高くなり、ゴルフ以外のアクティビティー(例えば、プールやテニスなど)に係わる施設やレストラン、バー、各種 エンターテイメント(例えば、ショー)などのサービスが充実しているクラブの可能性が高い。

メンバーへの道のり

いずれにしても プライベートクラブ、特に、名門と呼ばれるクラブのメンバーになる道のりは それなりに険しいものだ。ある程度以上の財力が必要になることもさることながら 多くの場合 複数の紹介状、社会的な地位 そして 望ましい個人のバックグラウンド(学歴やキャリア といった 履歴書的なもの)の評価に加えて ゴルフの知識とエチケットも要求されるからだ。

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まず、財力と言う意味では イニシエイション フィーと呼ばれる入会金(入学金のような性格のもの)とボンド 即ち 預託金が 数千ドルから 数万ドル(高級なクラブは 10万ドル以上)必要であるが 譲渡可能な会員権ではなく 投資目的で会員になる人は もちろん居ない。ビジネス上の理由や 社会的なステータスの獲得を目的にメンバーになる人も居ようが 殆どの人は ゴルフが大好きな人達である。また、プレーをしようが しまいが 支払わなければならない年会費が 一般的には 5,000ドル ~ 10,000ドルと高いことに加えて、ミニマムとよばれる 一定期間に 最低額の支出を要求されるのが一般的で(休会手続きをすることで 出費をミニマムにすることは 出来るだろうが)クラブを利用しないのに 会員になることは 極めて 不経済なのだ。

さらに、前述のメンバー所有のクラブでは クラブの運営が赤字になったり クラブハウスの改築などの一時的な支出が必要になった場合は メンバーの一人一人に アセスメントと呼ばれる かなり高額な費用負担が課せられることもある。ただし、メンバー所有のクラブは ノンプロフィット オーガニゼーションだから クラブ運営に必要な費用負担のみが年会費として徴収されると言う考え方が原則で 名門クラブだからといって 必ずしも年会費が 突出して 高い訳ではない。

また、社会的な地位 そして その人のバックグラウンドと ゴルフの素養(知識とエチケット)などについて 歴史ある名門クラブでは 特に 厳しい評価がなされる。メンバー所有のプライベートクラブには メンバーシップ コミッティー(委員会)と呼ばれるものがあり、その委員がメンバーの候補者 及び その家族と 面会をすることになる。アメリカでの経験が短い日本人がメンバー所有の名門クラブへの入会を希望する場合は 語学のハンデは もちろんのこと アメリカの文化や風習に馴染みのないこともあり 社会的地位や名声などが著しく高い人は 状況が異なる場合もあろうが 断られる可能性が高いと考えた方が良いだろう。

どのようなクラブにせよ 一般的に プライベートクラブでは エチケット 特に ドレスコード、携帯電話の使用(カリフォルニアでは 例外的に 携帯の使用に対する規制が緩やかなクラブが多いが)と プレーファーストに厳しいのが普通で クラブのルールの詳細は 会則 (Bylaw) に明記されている。通常、会則に反したメンバーには 厳重注意がなされるが 何度か注意を受けたにも拘らず それに従えないメンバーは 退会させられることになる。とは言え、一方で お金さえあれば メンバーになれ 会則も 然程 厳しくない プライベートクラブもあるから クラブを選ぶ時は 名門であれば ベターと言うことではなく クラブのメンバーのタイプや雰囲気、会則などが 自分や自分の望む クラブライフのニーズに合致しているかを考慮する必要があると言うことだ。

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差別問題

なお、カントリークラブにせよ ゴルフクラブにせよ、そのメンバーは 基本的に男性が殆どで 女性は その妻 そして ファミリーメンバーの一人としてクラブの施設を利用するのが一般的で(女性 ゴルファーの割合が低いこともあるが)女性で個人会員になっている人は 極めて 少ない。アメリカ社会は 女性の力が強く 平等で差別を嫌う社会だと考えている人も居ると思うが 歴史ある 名門クラブであればあるほど、男尊女卑、人種差別的な(多くの場合、暗黙の)決まりが まかり通っているのが実態かも知れない。対外的には 差別のないクラブの体裁をしていても メンバーシップが女性に与えられないとか 週末の朝のティータイムが女性に与えられていないクラブも 少なくない。女性差別だけでなく、その封鎖的な色彩は 人種差別的なクラブ運営を招いているケースも少なくない。黒人や黄色人種 また 場合によっては ユダヤ人など、ワスプ (WASP) と呼ばれる人達が中心の名門クラブのメンバーには マイノリティーが 極端に 少ないと言うことも珍しくない。その結果でもあろうが ニューヨークのような 大都会には ユダヤ人が作った(ユダヤ人のための)クラブといったものも 比較的 数多くある。

例えば、毎年、マスターズを開催するオーガスタ ナショナル ゴルフ クラブも 典型的なオールド ファッションの名門クラブの一つで 長年 女性メンバーは 受け入れなかった。2012年に コンドリーザ・ライス (Condoleezza Rice)、ジョージ・ブッシュ政権下で 国家安全保障問題担当大統領補佐官(第 20代)、さらに、国務長官(第 66代)などを歴任した人、もう一人は ダーラ・ムーア (Darla Moore) というサウスカロライナ州出身の財界人で 投資会社のレインウォーター (Rainwater, Inc.) のパートナー(同社創設者婦人)という肩書きの女性の二人が初の女性メンバーになった。1990年に 初めて黒人のメンバーを受け入れたという経緯もある。また、メンバーシップの応募はしておらず、メンバーの推薦のみによって メンバーを選出するのが会則である。ビル・ゲイツ (Bill Gates) やジャック・ウェルチ (Jack Welch) ほか、そうそうたる顔ぶれが メンバーに名を連ねているが その多くは 大企業のトップ または トップを務めた経験者、政治家、その他 著名人のようだ。かつて、National Council of Women's Organizations 会長のマーサ・バーク (Martha Burk) に 女性蔑視と非難された時に 当時のクラブの会長であった ジョンソン氏(Hootie Johnson)は 以下のようにコメントし その非難を一蹴する態度を見せた。

Our membership is single gender just as many other organizations and clubs all across America. These would include junior Leagues, sororities, fraternities, Boy Scouts, Girl Scouts, and countless others. And we all have a moral and legal right to organize our clubs the way we wish.

自由と平等 (freedom and equality) を 叫んできたアメリカであるが その憲法で 結社の自由 (freedom of association) の権利を 一方では 与えているから その権利を主張している人達が沢山居ると言うことだ。賛否両論あるが、そうした中で守られた 昔からのゴルフのスタイルや伝統(例えば、時代錯誤的な ドレス コード)があることも事実であり、そうしたものを守るために 同じ考え方をする人が集まってクラブを作り、そのルールを決めるといった自由の権利を(それを差別と言う人も居るだろうが)奪うことは出来ないという考え方にも 一理は あるだろう。会員が 200人程度のクラブのメンバーが 気の合う仲間とゴルフを楽しみたい - そう考えてクラブを結成し、運営してきた歴史があることも忘れてはならない。

夢のライフスタイル

ところで アメリカに住む ゴルファーの多くは 定年後に ゴルフが年中出来る ゴルフコースが目の前にある家か コンドミニアムに住み 余生を 優雅にゴルフをして暮らすという夢を持っている。ゴルフに 然程 入れ込んでいない ゴルファーでも 良く口にする夢で ある意味 それが典型的な定年後の夢のライフスタイルの象徴なのだろう。

フロリダ、ノース・サウス カロライナ、カリフォルニア、アリゾナ州などの ゴルフ コミュニティーには そうした夢を叶えた人が沢山移り住んでいる。そして、そうした人達がメンバーになる プライベートクラブ。セミプライベートクラブも沢山ある。そうしたクラブには そのゴルフコースの周りに建てられた家に住んで そのメンバーになるというコンセプトのものが目立つが どちらかと言えば お金さえ払えば入会させてくれるクラブが多いし、セミプライベートで 比較的 メンバーシップフィーの高くないクラブも少なくない。そのレベルは ピンからキリまであるから 自分の予算とニーズに応じて どんな所に住んで どんなクラブのメンバーになるかを決める訳だ。守衛付きのゲートのあるタイプのものは ゲーテッド コミュニティー (gated community) と呼ばれ、その多くは プライベートクラブ 即ち メンバーと メンバーのゲスト以外は 中に入ることの出来ないものである。そのゴルフ コースを パブリックに オープンしているものも少なくないが ゲーテッド コミュニティーにある家は 一般的に 高級なものが多く、家のサイズも大きく、プールの付いたような豪華なものが多い。

リタイヤ後に そうした所に移り住んだ人は 家のガレージに ゴルフカートを置いて クラブへは その自分のカートに キャディーバッグを積んで出かけ、近所に住む ゴルフ仲間と フォーボール ゲームのナッソーで ラウンド後に飲む ビールを賭けて ラウンドをする。そして、それが終わったら カートで サーっと帰宅するというのが日課になる生活だ。腕前は 90前後のスコアで ラウンド出来れば ゴルフ仲間を作るのには 事欠かない。社会的な地位や名声を とやかく言う人がメンバーシップ委員会に居るクラブでなければ メンバーの関心事は 気楽にゴルフを楽しむことの出来る クラブライフである。そんなクラブのメンバーになって ゴルフを満喫できる老後を夢見て 一生懸命 働いている中年ゴルファーが アメリカには 沢山居るはずだ。

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