意識と潜在意識|イメージの持つ力
♦ 意識と体の動きの関係
何発も何発も 練習場でボールを打つことによって 身に付ける ゴルフ・スイングだが、通常、そうして身に付けたゴルフ・スイングは こうあるべきだという考え方、即ち、意識して説明ができるアイデアによって ある程度 管理される。例えば、肩を大きく回すとか、頭を残すなどと言った(言葉になる)アイデア、所謂、意識が介在する。英語では conscious thought と言い、それは 様々な運動のメカニズムを理解し 覚える上で 重要な役割を果たしている。新しい考えや変化は 通常 意識することによって認識される訳だから、何も意識せずに ただボールを打っているだけでは 効果的な上達は望めないと言うことだ。
しかし、ゴルフ・スイングのように微妙な体の動きとバランス、タイミングが結果に大きく影響を及ぼす動作をする場合は 体を動かそうとする時、もしくは、その直前に そうした意識をしたり 考えをしても 上手く行かないことが多くなる。それどころか、多くの場合、一つのことを意識したことで 悪い結果を招いてしまうことが少なくない。それは 体の動きを意識でコントロールしようとすると(瞬間的にあることを意識することによって)体全体の動きの調和が乱れてしまうからで、OB を出す時などの典型的な思考と行動のパターンだと言える。
♦ 潜在意識とは
一方、潜在意識 (subconscious thought) は 自覚されることなく、行動や考え方に影響を与える意識とか、心の奥深い層に潜んだ意識などと説明されるもので、自覚している意識とは異なり、動作などを言葉を使って 体に命令する意識とは 一線を画すものである。しかし、子供が 見よう見まねで 大人より上手に物事をやってのけてしまうことがあるように、理屈を理解した上で その理屈を意識して体を動かさなくとも 上手な人の動作などを真似るといった(ただし、無意識とは言えない)行為で 上手く 体を動かせることがある。例えば、上手な選手のイメージを頭に焼き付けて その選手のように体を動かすといった学習法が 潜在意識を活用した学び方の一例である。
♦ イメージの持つ力
肩を確り回転させようと意識した時、肩を回せとスイングの最中の自分に言い聞かせながらクラブを振るのではなく、肩を回転させている ゴルファー(自分でも、第三者でも良い)をイメージし それを真似るように スイングしてみる。それが潜在意識を活用した 裏技的な 自己管理のテクニックである。イメージを使って 体を動かすよう脳に命令を発信させることで 体全体の動きの調和を乱すことなく 特定の考えを脳の中枢に効果的に伝えることが出来るものだ。
イメージの持つ力を利用することで 意識を潜在意識に置き換え 自分の動きをコントロールするという方法が 望ましい心身の状態を保ちながら プレーをするという意味では 非常に有効な方法だが、このように ゴルフでは 意識と潜在意識を上手く使い分けることで 練習の効率を高めたり、ラウンド中のナイスショットの割合を高め、ミスを減らすことが出来ると考えられている。それは 潜在意識を活用することで 言葉で 体に動作に係わる命令をするのではなく、イメージすることで 脳にそれを察知させ 体全体の動きの調和を乱すことなく 特定の命令を脳から体に伝えることが出来るからである。つまり、意識を潜在意識に置き換えて自分の動きをコントロールする方法で 望ましい心身の状態を保って プレーをすることが可能になると言うことだ。
次のショットで自分がやるべきことを考え、意識することは悪くないのであるが、そのままの状態でショットに入ってしまえば 失敗をする可能性が高くなるから、その考えをイメージ化し 悪影響を及ぼす可能性の高い意識を一度排除し、その後に 自分がやるべきことを反映した 鮮明なイメージを作り上げてから、出来る限り 無心になって イメージどおり ショットをすれば 良い結果をもたらす可能性が高くなるという訳だ。
♦ イメージの上手な使い方
普段の練習の時から このイメージの持つ力を上手く使ったスイング法の訓練をすることがオススメだが、その時に どのようなイメージを描くことがベストなのかを研究して欲しいのである。イメージする ゴルフ・スイングは 例えば ゴルファーのスイングを正面から見たイメージでも良いが、後方や 頭の上から見たイメージでも良い訳で、最も 効果的なイメージが どんなものかを探り出してみよう。イラストは 頭の上から見たトップの形を示したスイング・イメージの例であるが、活用すべきイメージは このような静止画でも良いが、テイクバックから フィニッシュまで のような 動画でも良いだろう。
そうしたことを研究していれば、テーマごとに 効果的なイメージが異なると言う発見をする人も居るだろう。例えば、前述のような 肩の回転という観点から効果的なイメージは 頭の上から 肩の回転に焦点を合わせて見た静止画のイメージだが、方向性重視で打ちたい(曲げたくない)時には 後方から スイング・プレーンに焦点を合わせて見た動画のイメージが 効果的だと言うようなことになる可能性もあるだろう。もちろん、どんなイメージが どのような時に効果的かは 人それぞれ 異なったものになるはずだ。
また、効果的なイメージが何かを考えることに加え、そのイメージ通りにショットをすることに集中するために どんなことが大切かを考えてみることも必要であろう。悪影響を及ぼしかねない(言葉になるような)意識を排除するという側面にも配慮するなど、多面的な視点から イメージの作り方と使い方を研究して欲しい。
真っ暗な自分の部屋に入った時に 手探りで 部屋にあるもの、例えば、机の角などに触れると、その瞬間に 部屋の中にあるもののイメージが 急に鮮明になるといったような現象があるが、潜在意識によって作られるイメージは ちょっとしたことで鮮明にすることが出来るという特徴もある。例えば、ショットの前に ワッグルをしながらイメージ作りをするというテクニックなどは 潜在意識の力を最大限に生かすための知恵と言える。どんな時でも より鮮明でポジティブなイメージを描くことが出来るようなプリショット・ルーティーンを作り上げる工夫を練習の時から 常にして欲しいものである。単に やるべきことをイメージするだけでなく、イメージすることによって 悪影響を及ぼしそうな意識を上手く コントロール出来るような イメージの上手な使い方も意識して 色々研究してみて下さい。