救済のニヤレストポイント|ルール解説
♦ 罰なしの救済
罰なしに受けられる救済について 正しい知識を身に付けるには 幾つかのポイントを抑えておく必要がある。つまり、(i) どんな状況にあるボールが罰なしの救済の対象になるのか、(ii) どうすれば ルール違反をせずに救済を受ける際に球をドロップ出来るか、(iii) 関連するゴルフ用語の定義について注意を払う という三点である。
罰なしの救済は (a) 動かせない障害物の中や上にボールがある時 また それがスタンスや意図するスイングの区域の妨げになる時、(b) 異常なグラウンド状態にボールがあるか、アドレス時のスタンスが それにかかる時に 受けられる。
♦ 救済のニヤレストポイントの決め方
罰なしの救済を受けられる状況に自分のボールがある時は ルールに従って 救済の二ヤレストポイントから ホールに近づくことなく 1 クラブレングス内に球をドロップしてプレー出来るが 救済のニヤレストポイントとは (i) ホールに近づかず しかも (ii) そこにボールを置けば ストロークをする時に救済を受けようとしている状態による障害がなくなる所で ボールの止まっている所に 最も近いコース上の「一点」である と定義されている。
ここで重要なことは「救済を受けようとしている状態による障害がなくなる所」という考え方で それに関しては「完全な救済」(complete relief) という概念を正しく理解しておく必要がある。つまり、修理地などの救済が受けられるエリアにあるボールの場合は その外に 球があれば良いのではなく、それに スタンスもかからない所でなければ条件を満たさないと言うことだ。上図のような状況で 右利きのプレーヤーがプレーしているとすれば A が ニヤレストポイントになる。図では C の方が A より 物理的には 少し近いが、右利きの場合、C ではスタンスが修理地にかかってしまうから C ではなく、修理地に スタンスがかからない状態で ボールを打つことを想定した時に球があるべきポイント B が右側の ニヤレストポイントになるから ボール (O) から A と B までの距離、即ち、OA と OB を比べて 近いサイドの A が 救済の ニヤレストポイントになると言う理屈だ。ただし、左利きの人であれば ニヤレストポイントは C になるし、図の例では 該当しないが、プレーの方向に対して後方が救済のニヤレストポイントになることもある。いずれにしても、救済のニヤレストポイントは「一点」である。
なお、スタンスが修理地など救済の対象になるエリアにかかるという観点から 救済の対象になるかをチェックする時のストロークとは プレーヤーが もし その状態がなかったら 初めのボールの位置でストロークをしていたはずのストロークのことで、それによって選択されるクラブとスタンスを基準にすることと定められている。つまり、自分に有利なサイドを 救済の ニヤレスト ポイントにするため、また、本来救済の対象にならない時に救済を受けることを目的にするなど、自分に都合の良いストロークで 救済に係わる判断と処置をしてはならないと言うことである。例えば、ドライバーで打つことは考えられないような状態で、ドライバーを持って、そのスタンスが修理地にかかるから救済を受けるということは許されない訳だ。救済を求めている対象物や状態が そこになかったら使っていたはずのクラブをプレーヤーは使わなければならない。また、ドロップをする時に 関連するルールに違反をしたら ペナルティの対象になるので その点についても注意が必要である。
♦ 正しい球のドロップの仕方
ルールに従って ボールを拾い上げて ボールをドロップする時のファースステップは ボールを拾い上げる前に ティーペッグやコインなどで 何処がルールに従ってボールをドロップすべき場所かを確認できるようにすることである。例えば、ニヤレストポイント (救済の基点) と そこからピンまで等距離の 1 クラブレングス横の所に目印を置いたり、後方線上のここはと思うポイントに目印を置くことである。新ルールでは どんなドロップも 救済エリア内にボールを落とし その中にボールが止まらなければならないから この目印を置く作業は 必須になってくる。その上で そのマークを目印にボールが正しくドロップされたかを確認できるようにして ボールを持ち ヒザの高さからドロップするという手順になる。旧ルールからは 1) ボールドロップのやり方 2) 再ドロップの条件 3) 後方線上とストロークと距離 (打ち直し) のボールドロップの仕方が変わったが それに伴って新ルールで登場したのが救済の基点 (reference point of relief) と救済エリア (relief area) という概念である。その点をしっかり理解し 具体的なボールドロップに係わる手順を確り覚える必要がある。ドロップしたボールは ドロップが許されるエリア 即ち 救済エリア内に止まらなければ 再ドロップが必要になる。二度 ドロップした結果 救済エリア内にボールが止まらない場合は 今までのルールと同じで 二度目のドロップで ボールが落ちた所にボールをプレースすることになる。後方線上 (reference line) のドロップとリティーできない打ち直し (stroke and distance) のボールドロップでも 救済の基点という概念が導入されたので 慣れるまでは 間違えやすいかも知れないが 以上のように改定されたことで どんな救済のドロップも同じになり (旧ルールでは 異なった) 球のドロップのルールが統一された訳だ。
実は 上のイラストに示した やり直しを要する球 (A) と (B) は ルール上 正確には意味が異なる。どちらも その球をプレーしてしまえば ペナルティーになるが (B)のように 球が救済エリア内なら 1打罰、また、(A) のように 球が救済エリア外なら 2打罰になる。ところで「無効」と説明したが それは 救済エリア内にヒザから落とす「有効」なドロップを 2度やっても 救済エリア内に球が止まらない時は 2度目のドロップで球が最初に落ちた所に球をプレースするという手順でのドロップの 1回に数えられないドロップだという意味である。なお、肩の高さからのドロップは 正しくないドロップで 無効なドロップとして(B) と同じ扱いになり ペナルティは科されないが ドロップをやり直す必要がある。
♦ 誤所からのプレー
以上のように、罰なしの救済を受けられるケースに遭遇することは 比較的 良くあることだが 救済のニヤレストポイントに関する正しい知識がなければ 誤所からのプレーのルール違反を犯し兼ねず、もし、そんなミスを犯したら ストロークプレーであれば 2打罰、マッチプレーなら そのホールの負けになる。ミスが起きる原因に鑑みれば 以下の二点に 最大限の注意を払うことである。
起こり難いことではあるが、もし、誤所からのプレーが ルールで定めるところの重大な違反であった場合は 失格になることもある。いずれにしても、これで 救済の ニヤレストポイントに関する正しい知識を身につけることが 如何に重要なことなのかは 理解して頂けたものと思う。