全英オープンのお話|2022年版
♦ 2022年大会コース
150回目の節目の大会となる 2022年は St. Andrews Old Course で開催された。このコースは Old Lady とか Grand Old Lady とも呼ばれるが 世界最古のゴルフコースだと言われている。1895年に このコースの横に New Course が造られてオープンして以来 このコースは Old Course と呼ばれるようになった。パブリック・コースであるが、このファースト・ティーの横には R&A のクラブハウスもあり 当に ゴルフの聖地と言える所である。
♦ 大会の見所、優勝賞金など
全英オープンは 所謂 伝統的なスコットランドと イングランドのシーサイド・リンクス(海岸縁)のコースで行われる点で 他のメジャーとは 一線を画している訳だが 特に 強風の中でのプレー、ポットバンカー (深いバンカー) やフェスキュー (膝くらいまである細く長い草) などへの対応、そして、アンジュレーションの大きなフェアウェイやグーリーンでボールを転がしてピンに寄せる技などが要求される点など 他のメジャー・トーナメントとは 一味も 二味も違った ゲーム展開となるところが見所である。
全英の大会優勝者には クラレット・ジャグ|Claret Jug と呼ばれる優勝トロフィーのレプリカが贈られ オリジナルのトロフィーには 優勝者の名が刻印される。最初の名前は 1872年優勝のトム・モリス・ジュニアであり、当に ゴルフの歴史に その名を永久に残すことになる。優勝賞金総額は 伝統的に 他のメジャー大会とほぼ同額で 2021年大会の賞金総額は 1150万ドルである。ただし、1860年 ~ 1871年は 優勝賞金はなく 名誉のチャレンジ・ベルトを優勝者が預かるという形式で行われ 3年連続して優勝すると そのベルトが優勝者のものになった。因みに、トム・モリス・ジュニア (Tom Morris Jr.) は 1868年から 1872年の 4大会連続優勝という快挙を成し遂げた。
全英オープンの最多優勝経験者は ハリー・バードン (Harry Vardon) で 6回、次いで、ジェィムズ・ブレイド (James Braid)、ピーター・トムソン (Peter Thomson)、トム・ワトソン (Tom Watson) の 5回である。次いで、4回に ウィリー・パーク (Willie Park)、トム・モリス (Tom Morris Jr.)、ウォルター・へーガン (Walter Hagen)、ボビー・ロック (Bobby Locke)、さらに、有名な選手には 3回の優勝を果たしている トム・モリス (Tom Morris Sr.) や ボビー・ジョーンズ (Bobby Jones) などがいる。なお、バイロン・ネルソン (Byron Nelson) は 全英オープンに勝つことができずに グランドスラムを達成することができなかった。因みに、タイガー・ウッズは 2000年、2005年、2006年と 3回の優勝を果たしている。» メージャー優勝者の記録
♦ 大会の歴史
第一回大会は 1860年に プレストウィック|Prestwick Golf Club で行われたが 参加選手は 僅か 8名、12ホールのコースを 3ラウンド、36ホールのメダル・プレー(トータルのストローク数で競う形式)であったが それが近代競技ゴルフの始まりであったとも言える。その第一回大会は 初日 (10/17/1860) で 優勝候補のトム・モリス (Tom Morris Sr.) に 3打差をつけた ウィリー・パーク (Willie Park) がリードをキープして 2打差のトータル 174 というスコアで優勝した。1871年大会は 戦争で中止されたが 1872年までの 12回の大会は 全て プレストウィックで開催され 当時は ウィリー・パークとトム・モリス親子の 3人が 圧倒的な強さを見せた時代だった。なお、近年、プレストウィックで全英オープンは 行われていない。
1873年の大会は 初めて セント・アンドリュース|St. Andrews で開催されたが プレストウィック以外のコースでの大会開催は それが初めてのことだった。しかし、それ以降は プレストウィック、セント・アンドリュース、ミュセルバーグ|Musselburgh の 3コースの持ち回りで行われるようになり 更に その後 1892年に ミュアフィールド|Muirfield、1894年に ロイヤル・セント・ジョージ|Royal St. George's、1897年に ロイヤル・リバプール|Royal Liverpool などが それに加わるようになった。そして、1920年以降は The Royal and Ancient Golf Club 即ち R&A が大会の管理・運営を行うようになった。
その後 幾つかのコースが このローテーションに加わるようになる一方で プレストウィックや ミュセルバーグなどは このローテーションから外れ 現在では スコットランドと イングランドにある 以下の 9コースが持ち回りで 全英オープンをホストするようになった。1) ~ 5) は スコットランドのコースであるが セント・アンドリュースのオールド・コースは 特別で 0 と 5 の年 つまり 5年に 1度の頻度で(他のコースは 10年に 1度)大会をホストすることになっていた。なお、2005年に ジャック・ニクラウスの引退試合が セント・アンドリュースで行われた時に スコットランド銀行が 5ポンドのニクラウスの記念紙幣を発行したのは 有名な話である。 » 詳細
♦ 持ち回り 開催コース
英国では 会員を男性に限定してきた コースが多かったが (セント・アンドリュースや ミュアフィールドなど) そうしたコースが 大会持ち回りのコースに 相応しくないという世論もあり 騒動になったこともあった。しかし、近年は どこも女性会員を受け入れるようになり 現在のローテーションは 以下の通り。
全英オープン 持ち回り 開催コース |
1) セント・アンドリュース・オールド・コース |
2) カーヌースティー 3) ミュアフィールド 4) ターンベリー 5) ロイヤル・トゥルーン 6) ロイヤル・セント・ジョージ 7) ロイヤル・バークデール 8) ロイヤル・ライサム・アンド・セント・アンズ 9) ロイヤル・リバプール|ホイレイク |
♦ 追記事項
前述のように セント・アンドリュースのオールド・コースは 特別なコースで 0 と 5 の年に大会をホストしてきたが 2020年大会がコロナで中止になったため 最後に 大会が行われたのは 2015年 144回大会であった。2022年大会は その伝統を変えて セント・アンドリュースで行うことになるがオールド・コースでの開催は これで 30回目になる。前回のコースは 下のような パー 3 が 2 ホール、パー 5 が 2 ホールの 7,297ヤード、パー 72 のコース設定であった。ご存知の方も少なくないと思うが 9番のグリーンがクラブ・ハウスから最も離れた所にあり 2番から 8番ホールまで(そして 10番から 17番まで)がダブル・グリーンになっている。
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | Out |
375 | 452 | 398 | 480 | 570 | 414 | 371 | 174 | 352 | 3,586 |
4 | 4 | 4 | 4 | 5 | 4 | 4 | 3 | 4 | 36 |
10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | In |
386 | 174 | 348 | 465 | 614 | 455 | 418 | 495 | 356 | 3,711 |
4 | 3 | 4 | 4 | 5 | 4 | 4 | 4 | 4 | 36 |
少し古い話になるが 2009年に ターンベリー (Turnberry) で行われた全英オープンでは 当時 59歳(60歳に 2ヶ月)のトム・ワトソン (Tom Watson) が 2 アンダーで 72ホールを ホールアウトし 同スコアで 先にホールアウトし 最終的に 優勝した スチュアート・シンク (Stewart Cink) とのプレーオフになった。トム・ワトソンが 最終日に 1打リードして迎えた 最終 18番ホールで出してしまった痛恨のボギーは まさに そのセカンド・ショットで起きた神の悪戯とも言える ラブ・オブ・ザ・グリーン (rub of the green) の結果だったと言えよう。 » トム・ワトソンの記録